【 第三章 第三話 】
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「…向かってる、火の神の神殿の方へ。カイトの傷は癒えたんだね…。」
微笑みながら、フォールは呟く。
「キリアの力も回復したんだ…ふぅん。」
そしてしばらくの間物言わずにじっと考えていた。
表情を崩さず、とても楽しそうに。
「シギ、タキ。」
「は。」
暗闇の中から2人の男が静かに現れた。
黒い服に身を包み、2人は同じ顔をしていた。
1人は短髪、1人は長髪。それくらいしか見分ける方法はないだろう。
フォールの前に跪き、彼の次の言葉を待った。
「キリア達のところへ行く。今回は同行を許可する。」
「――御意。」
それだけの会話の後、闇の中へ溶け込むように3人は消えた。
「ここが?」
「そう、禁断の森だよ。」
「ですがキリア様がびっくりなさるのも無理はないでしょう…。」
禁断の森。
それはどんよりしていてじめじめしていて深い深い森――だと思っていた。
しかし今目の前にある森はとても美しい森だった。
「この美しさが、この森の危険なところなんだ。」
カイトが森の方を見つめたまま言う。
「危険なところ?」
「この美しさに惹かれて人々は中へと入っていく。
だけど実際は中は魔物がたくさん生息しているし、
迷路のようになっていて外へは出られない。」
「この森へ入って出てきた人は今までに2人しかいないんだよ、キリア。」
「え?じゃあシア…この森に入った人がいるの?」
「私とカイト様が調査のために、2年前に一度入りました。」
「えぇっ!?」
事も無げに涼しい顔をしてサラッとサディウスが言う。
「魔物はカイト様や私の実力には及びませんね。迷路には多少頭を使いましたが。」
「じゃあ、火の神殿にも…?」
「ああ、見たよ。でも中へ入ることはできなかった。」
「何かに拒まれているかのように、前へ進めなかったんです。」
「……シャルスの、結界…。」
「たぶんな…。」
――あの言葉。そしてこの森。
本当に、シャルスに何が起きたというの?
不完全なまま甦った全神。
未だ封印されたままの四聖神。
わからない。考えても考えてもわからない。
私はあなたに会えるの、シャルス……?
「そろそろ参りましょう。はぐれないように気をつけてくださいね。特にシア。」
「んなっ!?子供じゃないんだからはぐれるかぁっ!!」
とにかく進もう。火の神殿へ行けばきっとわかる。
どんな魔物が出てこようとも、どんなことが起きようとも。
シャルスが私に助けを求めているのなら、行かなくてはいけない。
禁断の森と火の神殿。四聖神が1人、火神シャルス・サラマンドラ。
そして、全神キリア・セレシリス――。
前へ進めば、きっと何かが少しずつ解ってくるはずだから。
― 求めるものは森の中に ―
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