【 第三章 第一話 】




--------------------------------------------------------------------------------------------------- 『キリア…』 “―――誰?” 『キリア、気をつけろ。今の俺は元の俺じゃない…。』 “それは、どういうこと?” 『――きっと危害を加える。でも体を制御できないんだ。』 “…どうして?” 『千年は、とても長いから…。』 “千年――…” 『良いなキリア、気をつけるんだ。そして俺を元に―――』 「シャルス…」 翌朝、キリアは夢の終わりと共に目を覚ました。 それはハッキリに思い出すことが出来るほど鮮明な夢だった。 耳に残る彼の忠告の言葉。そして願望の言葉。 燃え上がるような紅い髪と瞳を持った彼――シャルス・サラマンドラ。 この町に来てからキリアは少しずつ彼のことを思い出していた。 それは漠然としていて掴み所の無いものだったけれど…。 “…危害を加えるってどういうことなんだろう?” 気になるのは夢の中の言葉だった。 魔族や魔物に気をつけろ、と言うのならわかるものの、 彼自身に気をつけろと言うことは一体どういうことなんだろうか。 “力を制御できないって言ってた…でも、どうして?” ――思い当たることが無い。そもそもシャルスは封印されているはずだ。 力を扱うはずがない。 “…封印が解けたということ?” わからない、わからない、わからない。 いくら考えても考えても、答えは浮かんでこない。 “シャルス、シャルス教えて。どういうことなの?私はどうすればいいの――” コンコン その時、ドアを叩くシアの声が聞こえた。 「キリアー起きてる?入るよ?」 「あ、うん、どうぞっ。」 一瞬ドキッとしたけれど、キリアは直ぐに返事をした。 「おはよ!体調の方はどう?」 既に着替えたシアは、いつもと変わらぬ微笑を浮かべて入ってきた。 「もうすっかり良いみたい。」 「そうか、良かった!そういえば顔色も結構良くなったしな。」 「うん。あの…シア、心配かけちゃってごめんなさい…。」 そう謝ると、シアは少し驚いたような顔をして私の顔を見つめた。 “あ…れ?何か間違えたのかな?” そう思っていると、キリアはシアにぎゅっと抱きしめられた。 「心配したよ。凄く心配した。カイトは大丈夫だって言ってたけど  このままキリアが目を覚まさなかったらどうしようとか  力がなくなって私のことも忘れてたらどうしようとか…」 「シア、ごめ―」 「だけど、キリア!あんたの謝罪の言葉なんて私は要らないよ。」 「あ…。」 「そんな言葉より、自分をもっと大切にして。  ムチャをするなと言っても無理な旅だけど、ムチャするな。」 …胸が、痛かった。シアがそこまで心配してくれてるなんて、 まだ知り合って日も浅いのに、そんなに思ってくれてるなんて。 「私はキリアが居なくなるなんて嫌だからね!  困ったことがあったら、1人で抱え込まずに直ぐに言うんだよ!」 「うん。ありがとう、シア…。」 そう、初めは興味本位だった。ただの好奇心だった。 ―――伝説の全神が現れた。 カイトからの話を半信半疑で聞き流し会いに行くと、 そこには城の銅像や古文書に描かれていた全神の少女が居た。 それは可愛らしく、どこか儚げで…。 この子に本当に全てを司るだけの力があるのだろうかと内心疑った。 しかし、全神の神殿で現れた少女。キリアと言う名前。黄金の髪に、緑の瞳…。 “面白いじゃないか。” この少女がどこまでやれるのか。 狂いだした世界を救うことが出来るのか。 全てを見てやろう――――――――そう思った。 だけど今はそんな興味など好奇心など一切ない。 ただこの少女を失うのが恐ろしいと思う自分が居る。 妹のような、娘のような、大切な存在。 もうシアの思いは決まっている。 “キリア、あんたが行くなら私も行く。” それは命を懸けた忠義。 “危険なことはわかっている。だけどもう放っておけないよ…。” 魔物が襲ってこようと、魔族との戦いになろうと、 何があってもこの少女の行く先を共に歩もう。 願わくば、全てを担う少女に光あらんことを―――― ― 其処に在るものは慈愛と忠義 ―














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