【 第二章 第三話 】
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「お前が魔族の族長だって?」
駆けてきたシアとサディウスさんも驚いた顔をしている。
「コイツが、魔族の…族長?」
「そうだよ。まぁ魔王とも言われてるけどね。」
「信じられない…何故魔族の族長ともなる者が1人でここへ?」
「俺は強いからね。別に護衛なんていらないの。」
それは本当だろう。オーラだけでその力の大きさを示している。
力の弱いものは一発でやられてしまうだろうし、
ある程度強いものなら避けるだろう。そんなオーラを…。
「――フォール、答えろ。お前達は一体どこから現れたんだ?」
「何言ってんのカイト?俺達を生まれさせたのは人間じゃん。」
「それは、一体どういうことですか?」
信じられない、といった顔でサディウスさんが問う。
「全神が封印されて、世界は一見穏やかに動いているように見えただろうけど、
やっぱり憎悪や不安なんかは増えてたみたいだね。」
「まさか魔族は――」
「その憎悪や不安なんかのマイナス的な思いが具現化したモノだよ。
流石頭が切れるね、人族の族長さん?」
「っお前――!!」
嘲笑うフォールに腹が立ったのか、シアが剣に手をかけた。
「待ってシア!!」
「キリア!?」
「全神が居た頃は、魔族はいなかったんでしょう!?」
いろいろなことが混乱して、全て解らなくなりそうだった。
だけどついて行かなきゃいけない。
フォール。魔族の族長。
この人が私の戦うべき相手なんだろう。
「――なかなか威勢が良いね、キリア。気に入っちゃったよ。」
楽しそうにクスクスと笑う。
そんなフォールに少し落ち着きを取り戻したシアが言った。
「っお前達魔族の目的は一体何なんだよ!?」
笑うのをふと止めたフォールが、再び私の方をまじまじと見てくる。
「魔族全体の目的は全神を蘇らせないこと。
封印なんて甘っちょろいものじゃなくて、この世界から消し去ること。」
―――つまりは全神を殺すこと。
「そうすれば魔族は消えない。世界は俺達のものだからね。」
さらっと言ってのけるフォールに恐怖を覚え、体が凍りついたようになる。
「そんなことは、絶対にさせない…。」
怒りを押し殺したような、でも冷静な声でカイトが言った。
「人族一の力を持ったカイトが側にいるんだもんね。簡単にいくとは思ってないさ。」
「それに、こっちもちょっと目的が変わったから。」
そう微笑む笑顔がキレイすぎて、体が震える。
「目的が変わ――」
言葉を言い終える前に、一瞬の間に、何かが起きた。
カイトの横に居たはずなのに、
何故かフォールの腕の中にいて、
目の中に入ってきたのは、
真っ赤に染まったカイト達だった。
― 魔族の目的 ―
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