【 第二章 第二話 】
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美しい森だと思った。空気は澄み渡り木々は凛と天聳る。だけど――
「この森には動物がいないの?」
これほど綺麗な森なのに、動物の気配が全くしない。
「普通の動物は住んでいないだろうな。」
「普通の動物?カイト、普通じゃない動物ってどういうこと?」
「魔族の放った魔物たちだ。」
「魔族?」
「キリア様、前は魔族なんて居なかったんです。」
「え?」
「この世界がおかしくなり始めてどこからか出てきやがったんだよ。」
「どうして・・・・。」
「さあ、私たちにもよくわからないけどキリアを覚醒するためには――」
「戦わなくちゃいけないの?」
「そうだね。」
シアがちょっと切なそうに微笑んだ。
戦い。
魔物がこの世界の崩壊を助長しているなら、それは避けてけて通れない道。
だけど私は何の力も持っていないから、きっと皆の足手まといになる。
どうすれば力を手に入れられるんだろう。皆を護れる力を―――。
「―っ!?」
何、この気配?凄く強い何かの塊みたいな・・・・。
「早速お出ましのようじゃないの。」
「なかなか大きいですね。」
「いきなり上級みたいだな。」
「・・・この気配ってもしかして」
「魔物だ。」
「―――――っ来ますよ!」
「グアァァァァァァァァアッ!!!!!」
現れたのは目が紅く鋭く光った巨大な獣。
白く長い毛が体中を覆っている。これが魔物?
「上の上じゃないか!」
「久しぶりに見ましたね。」
「サディウス、シア、キリアの側に居ろ。俺1人で十分だ。」
「なっ、お前1人だけ」
「シンシア。ここでムダな体力を使うのですか?」
「〜〜っ解ったよ!抜かるんじゃないよ!?」
「当たり前だ。30秒で片付けてくる。」
「カイトッ!?」
「キリア様、上級魔物と言えどもカイト様の前じゃ一溜まりもありませんよ。」
「だけど・・・・」
「悔しいけどカイトは国一の実力者だからな。」
高く跳び上がったカイトが剣で魔物を斬りつける。
そして剣に加えながら剣の先から何かを出している。
あれが魔術?
斬りつけられて動けなくなった魔物。そしてカイトが剣を一振りした。
ザシュッ
「ギャァァァァァァ・・・・・」
倒れた魔物は一瞬にして風化された。
本当に30秒であの大きな魔物を倒してしまった。
1人で、一歩も引くこともなく、躊躇うこともなく。
「カイト!!」
2人の側から離れてカイトたちの許へ駆け寄る。
数十メートルの距離。
ドクンッ
――え?
突然感じたのは、さっきの魔物とは違った気配。
逃げ出したくなるような気配。
コ ワ イ 。
「キリア!!」
ガクガクと震えが止まらない。一歩も動くことが出来ない。
ザワッと一筋の風が吹いて、目の前に男の人が現れた。
「君が、全神 キリア・セレシリス?」
銀髪に青みがかった黒の瞳。年齢は同じくらい。
「ふぅん。普通の女の子に見えるけど、確かに秘める力はたいしたものだね。」
まじまじと私の顔を覗き込む。居るだけなのに、凄い威圧感がする。
「誰だ、お前は?」
いつの間にか横に来ていたカイトに側に引き寄せられた。
「君がカイト?もう気付いてるんでしょ?」
「だからこそだ。」
「用心深いんだねぇ。」
クスッと笑ってその人は一言言った。
「俺はフォール。君たちが敵視する魔族の族長だよ。」
― 魔族と魔物と ―
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