【 第一章 第四話 】




--------------------------------------------------------------------------------------------------- キリアを寝かせておいた部屋に戻ってみると、部屋には誰もいなかった。 「どこへ行ったんだ・・・?」 まさか―――――― この王城には禁断の部屋がある。 そこは全神の神殿同様、全神、“力”を持つ者もしくは四聖神のみしか入ることが出来ない。 それが『神の間』である。 初代王アーシスがその部屋を作り、晩年そこに篭っていたという。 城の中であるが『神の間』は異空間であり、なぜ作られたかは定かではない。 そしてそこは並ではない結界がはられ、人々は近づかない。 “力”を持つ者も、一生に一度、近づくか近づかないかの場所であった。 キリアがこの部屋から出てまで行く場所は『神の間』しかない。 おそらくキリアが持つ力と部屋の持つ力が惹かれ合ったのだろう。 『神の間』を好んで近づく者もいないだろうと、周辺には警備も置いていない。 「だからキリアが城を出歩いているのに騒ぎにならなかったのか・・・。」 急いで部屋を出て、『神の間』へと向かう。 もしかしたらキリアにまた何か起こっているかもしれない。 彼女が全てを司る全神でも、やっぱり1人の女の子にしか見えない。 何もわからないという不安と戦う少女。できるだけ側にいてやりたい。 今の俺にはそれくらいしかできないから―――。 千年前、俺は確かにアーシスだった。だけど不確かで曖昧な記憶。 アーシスとキリアはどんな風にして出逢ったのか。 どのような関わりを持ち、何を話していたのか。 そしてなぜキリアは狂い、アーシスが封印することになったのか。 そして、なぜ俺とキリアがまた出会ったのか。 全ては謎だらけだ。俺だって何もわからない。ただ―――― 気がつくと『神の間』の部屋の入り口に立っていた。相変わらず厄介な結界の模様だ。 ドアに手を触れると、足元に移動魔法の陣が現れる。 パアアアアアアアァァァァァァァ 何度も何度もここへ来ているから、俺にはこれはもう慣れたことだった。 人は近づかないが、俺は千年前のことをもっと知りたくて何度も足を運んだ。 『アーシス』として更に過去を思い出したい気持ちもあり、 『カイト』として千年前への興味もあった。 「キリア?」 『四聖神の間』にはキリアはいなかった。だとすると『全神の間』。 そして『全神の間』は―――――アーシスの、最期の場所。 キィ・・・・・ ドアを開けると目の中に飛び込んでくるのは、幸せの中で微笑む少女。 かつて世界をその力で包み、人々に幸福をもたらした少女。 全てを司る女神 ―――― キリア・セレシリス その肖像画の前にキリアは立っていた。俺が入ってきたことに気づいていないのか、 身動ぎせずその絵をじっと見つめている。 「キリア。」 静かに呼ぶと、驚いたのか肩をビクッと震わせこちらをゆっくりと向く。 「カイト・・・・。」 「キリア、どうしてここへ?」 「ん・・・また声が、したの。」 「さっきの声か?」 「ううん、さっきのとは違うんだけど私を呼んでいて、  それが聞こえる方へ来てみたらここへ着いたの。」 「そうか・・・・だとしたらやっぱり部屋がキリアを呼んだのかもな。」 「・・・・なんだかすごいね、ここ。」 「ああ。全神の神殿と同じ結界が張ってあるからな。」 「――――この人が、全神キリア・セレシリスなのね。」 そういって、キリアはまた肖像画へと向き直る。 「私と同じ顔。・・・・・・・・これは、私なんだよね?」 「キリア・・・・。」 「何かの間違いだって思った。私が全神なわけないって思った。  だってほんとに何も知らなかったから。だけど・・・・だけど・・・っ」 肩が震え、言葉も震えている。 「シャルスもミラもファクトルもナティラもみんな懐かしく感じて・・・・」 「アーシスも、すごくすごく懐かしい・・・・っ。」 「キリア・・・・・。」 全てを受け入れようとする彼女がすごくか細くて、儚げで。 そっと抱きしめた。 「・・・カイト・・・っ・・。」 拒絶されるかと思ったのに、キリアは腕の中でただ静かに泣く。 「私に・・・出来ることは、何?」 やっぱり俺には普通の女の子にしか見えない。 「わからないことばかりだけど・・・っ私にしか出来ないこと、頑張るから・・っ。」 「――ああ。」 全ては謎だらけだ。俺だって何もわからない。ただ―――― この小さな女の子だけは、俺の全てをかけて護ろう。 ― 自分への誓い ―














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