【 第一章 第一話 】




--------------------------------------------------------------------------------------------------- 全神が封印され、天と地が分かれた。

それが何十年、何百年と続き、千年目になったとき、天も地も秩序を失った。 偶然かそれとも必然か。 両方の世界を治める者―新たな全神が必要となった。

そう、全神は原因不明で狂っただけなのだ。

正常の全神ならば、世界は安定していた。 全神の封印を解け! 人々はそう叫んだ。

全神の封印を解ける者は正統な王しか居ない。

王は秩序が崩壊するとき殺されてしまった。

となれば、それができるものは父王の“力”を受け継いだ、第一王子しかいない。

彼は若いが剣術、弓術、魔術、勉学全てにおいて優秀である。

神殿までの道はもはや危険この上ないが、彼ならば辿り着くことができるだろう。

そして彼の容姿は、初代王の生き写しだった。 人々は彼に封印解除を試みるように頼んだ。

彼は快く承知した。 彼に欠落したところがあるとすれば、欲が無いところであろう。

己が無理矢理世界を立て直そうとするでなく、

人々が望むことを望む。初代王も、そういう人間だった。 彼は全神が封印されていると言う全神の神殿へ、少しの従者を連れて向かった。

封印されて以来神殿には結界がはられ、人々は神殿へ近付けなくなった。

近づけると言えば、“力”を持つ者か四聖神のみである。

そして秩序が失った途端、神殿の周りには魔物が出だした。

人々は全神を崇めつつも、神殿からは遠のいていった。



魔物を倒し神殿へ近くなると、従者達は結界に阻まれだした。

しかしやはり、“力”を持つ彼は進むことができた。 彼は神殿の中へ入っていった。神殿の中央、全神の像の手前にある、水晶の塊のようなもの。

これに全神が変わらぬ姿で封印されているはずだ。彼はそれに近付いて行った。 居た。 美しい黄金のウェーブの長い髪。白い肌。整った形の唇。そして全神を表す額の印。 千年前と全く変わらない・・・・ 彼はそう思った。彼はただの初代王の生き写しではない。

初代王の生まれ変わりだったのだ。 千年前、彼と全神は恋に堕ちた。 全てを平等に愛さなければならない彼女にとって恋や愛は禁忌のものだった。

されど彼女は彼に恋をし、彼を愛した。

だから自分の力を抑え切れなくなり狂ってしまったのだった。 しかし彼はそれを憶えてはいない。 憶えていたらまた全神を甦らそうなどとは思わないだろう。

しかし彼はその記憶は持っていない。彼の記憶は途切れ途切れで曖昧なものだった。 全神は封印から放たれる。また同じ悲劇が繰り返されるかもしれない。 「Ληκζτγφ,Θδαξωσ・・・・・」 彼は封印解除の呪文を唱え始めた。父である王が、昔から彼にだけ口ずさんできた呪文だ。 これで全神は甦る。全神が甦れば、同時に四聖神も甦る。これで世界は安定する― イ ヤ 彼の呪文を何かが跳ね返そうとしてきた。何だ? 「Ψζφυδξραοεγτ・・・・」 彼は更に強く呪文を続ける。 ヤ メ テ それでもやはり何かが呪文を跳ね返そうとする。彼にはそれが何なのか見当もつかなかった。 「Χζηεχοναρβτγ・・・・・」 ワ タ シ ヲ ホ ウ ッ テ オ イ テ 彼には聞き覚えのある声だった。 「Ρξθθζεδτσρλνκ・・・・・」 オ ネ ガ イ 「Ιηιιψηφδβσοαρ・・・・」 そうこの声は忘れもしない千年前の―― ア ー シ ス 「Κιλια?」 “キリア” これが呪文の最後の言葉だった。 最後の言葉を言い終わると同時に神殿の中は光に包まれた。

彼はその眩しさに目が眩んだ。そして彼が目を開けると、彼は自身の目を疑った。 まさか・・・・どういうことだ? 全神の封印は解かれていなかった。水晶の塊の中に全神はまだ居た。

変わったものが在るとすれば、その前に少女が居るということだ。

居る、いや横になって浮いていた。彼は少女を抱き下ろした。 これはどういうことなのか。 彼には全くわからなかった。そして同時に目覚めるはずの四聖神も居ない。 「う・・・・ん・・・。」 少女が目を覚ました。彼は少女の顔を見て驚いた。少女は全神の生き写しだった。

額に印はないが、髪も同じ黄金。そして緑の瞳―。 そして彼女は言った。 「・・・・私・・」 千年前と変わらない透き通るような綺麗な声。 「君は・・・・」 「私は・・・・キリア。」 「キリア?君はまさか・・・・・。」 風が一吹きして1人の女が現れた。 「キリア様、アーシス様、お久しぶりです。」 彼女は言った。 「フィリア?」 彼の記憶が正しければ彼女はフィリア。唯1人全神に付いていた者だ。

しかし彼女の反応は無い。そして一方的に話を続ける。 「貴方方がこれを見る頃は私はもうこの世に居ません。私は不老不死の神ではないですから。」 彼女のその言葉でこれはここに残る記憶だと悟る。だから彼女に何か言っても伝わらないのだ。 「私は御2人に伝えなければならないことがあります。」 彼女の顔は、真剣そのものになった。 「私がこうして御2人の前に記憶として現れるときは、全神であるキリア様が甦るときです。

 しかしアーシス様、今貴方の前に居るはずのキリア様は、完全な全神ではありません。

 その証拠に、四聖神も甦ってないはずです。」 どういうことだ?彼女の言うことは全て当て嵌まる。

しかし何故千年もの前の昔にそんなことが判ったのか?

「キリア様が完全な全神として甦るには、

四聖神の各々の神殿へ行き、4人を甦らせなければなりません。」

四聖神の宮殿。

ここから南に火を司る男神 シャルス・サラマンドラの神殿がが。

ここから北に水を司る女神 ミラ・ウィンディーネの神殿が。

ここから東に風を司る男神 ファクトル・シルフの神殿が。

ここから西に地を司る女神 ナティラ・ノームの神殿が在る。

「そして四聖神と共にもう一度全神解放を行ってください。

 そうすれば全神は完全に甦ります。」

事態は悟った。しかしその理由は解らない。何故全神はすぐに甦らないのか?

「ただ、忘れないで下さい。過去を繰り返してはならな・・・い・・と・・・・・―」

そう言って彼女は消えた。幾つもの手がかりを与え、幾つもの謎を残して。

彼は暫く呆然としていた。

―・・・・動くしかない。全神を完全に甦させなければ世界は滅びてしまう。

「キリア、先ず城へ行こう。そこで旅支度を。」

彼は言った。しかし― 「・・・キリア。それしか解らない・・・・。」 彼女の答えに彼は愕然とした。 彼女の記憶は一切無くなっていた。 ― 目覚めた少女 ―














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